この天下にはたまに嵐が吹き荒れる。何の巡り合わせか、歴史上のとある「点」において、才ある者が突如として大量発生、巻き起こす嵐。一憩が意気揚々旗揚げして以降にも二度、そんな嵐が吹き荒れて、一憩含め志に燃える全ての者が誰を自軍に迎え入れるかということに非常に頭を悩ませた。
一憩が体験した一度目の嵐を民衆は『グランジ』と呼んだ。サーストン・ムーア率いるソニック・ユース、エディ・ヴェダー率いるパール・ジャムなど、後世に名を残すであろう才能が次々に出現して、天下を席巻した。そんな中、一憩が熟考の末に自軍に招き入れたのが他でもない、つい先程、七頭目の虎に任命され、意気揚々出撃したカート将軍、ニルヴァーナであって、カート将軍こそは当時、『グランジ』の渦中にあって「最強」と謳われた猛者であったが、「素行が...」との判断でどこからも拾ってもらえなかったものを一憩が三顧の礼をもって丁重に迎え入れたのであった。
次に吹き荒れた一憩にとって二度目の嵐を民衆は『ブリット・ポップ』と呼んだ。この嵐、台風の「目」はなんといっても今現在、一憩に仕えて「レディヘ」なる賊と一進一退の攻防を展開しているオアシスであった。そして、この『ブリット・ポップ』を語る際にはオアシスと並び称された才能、デーモン・アルバーン率いるブラーの存在を無視できないが、一憩は、無視こそしなかったが、自軍に迎え入れるというようなことは一切しなかった。何故か。それは一憩の目が他に向いていたからに他ならず、その一憩の目線の先にあって、一憩が是非とも自軍に招き入れたいと考えていた人物こそが、この『ブリット・ポップ』なる嵐において「歌姫」と謳われていたソニア・マダン率いるエコーベリーだったのである。
〈続く〉
歴史小説・散獄志(其の四)
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